人間は走るために生まれた動物

すごい本を読みました。
『BORN TO RUN 走るために生まれた~ウルトラランナーVS人類最強の”走る民族”』


トレイルランニングという競技があるんです。山岳耐久レースとも言います。山岳を走る抜ける競技です。フルマラソンの何倍もの距離のコースを走ったり登ったり、ときには一昼夜やりつづけるという過酷なレース。いやもう普通の人間にはまねできません。


いっぽうで、そんなレースを普段からやっている民族があるというんです。メキシコの秘境に住み、山をサンダルで駆け巡っているというのです。岩場でも上り坂でも飛ぶように軽く、いかにも楽しんで走る、アスリート民族です。
この民族から、かつて幾人かの走り手がアメリカでの大きなトレイルランの大会に引っ張り出され、圧倒的な差で優勝したことがあるのだそうです。


筆者、トレイルやウルトラマラソンを楽しむランナーにして作家、が謎の走る民族を調べるために秘境に向かい、奇妙な乞食のような白人と出会うことでこのノンフィクションの物語が動き出します。その白人はある計画をたくらんでいます。それは、トレイルランのトップアスリートたちを「秘境」に招きいれ、走る民族のたちと競わせる大会を開くというものです。その計画は成功するのか……。


そのメインの物語を中心に、話は横道にそれまくります。
トレイルランの英雄たちの紹介です。
なぜどのように走り始め、走り続けているか。どれをとっても胸を打つエピソードで、今すぐ外に飛び出して走り出したくなる力を持っています。そして彼らは、必然性をもって、メキシコの秘境に集結します。


また、別の横道が、人間はなぜあんなに走れるのかということです。
山道を一昼夜走り続けるなんて普通の人間にはまねできないとさきほど書きましたが、むしろチータやガゼルや馬こそ一昼夜走ることができないのです。そう、人間だけができるのです。なぜならば人間は走るために生まれた動物だから。Born to Run。
その根拠を人類学、生物学などを動員して論証してくれます。読めば納得します。
また、ナイキをはじめとする高機能ランニングシューズのせいで、現代人の脚はどんなに痛めつけられたかも説得力をもって論じています。
メキシコの秘境の走る民族の、薄いサンダル履きで軽やかに楽しげに走る姿こそ、本来の人間の走りなのです。


とうとうクライマックス。
駅のホームで立ち止まって読みきってしまいました。


もうすぐ吉川なまずの里マラソン
僕は楽しく走ろうと思います。苦痛までも楽しみながら。
(じつに)