ジャムセッションですね

とある連で大太鼓一筋だったというNさんが、奥様といっしょに大雨の中練習場所に現れました。
「叩いてみたら」と会長に促されて、「ひさしぶりだなあ」と言いながら、大太鼓を担ぎました。連をやめてブランクが長いようです。
Nさんは力強く軽快に叩き始めました。いろんなパターンが組み合わせられた長いフレーズでした。
これは南越谷阿波踊りで統一のお囃子として認定されているフレーズなのだそうです。
そんなものがあるということを僕は初めて知りました。


「そのフレーズを基本として、いろいろ変化をつけるんですね」と僕が聞くと、
「いえ、このフレーズだけで、変えてはいけません」とNさん。
「え!?」と僕は絶句しました。


なんと南越谷阿波踊りに出演している連のお囃子はすべて同じで、流している間中ずっと変わらないものなのだそうです!
それは退屈ではないでしょうか……。
高円寺阿波踊りでは、どの連も個性的なお囃子を奏でていますよね。


「うちの連は臨機応変ですよ。鉦の指示で速さやパターンを変えたり、太鼓同士の目配せで新しいフレーズを作っていったり」
「ほお、それはジャムセッションですね」


それからNさんを交えた鳴り物で踊りの練習を続けました。


ところが後半になると、踊り手たちも小学生も大学生もみんな鳴り物をやりたがるという珍しい事態が起こりました。
みんな好き放題に笑いながら太鼓をぶっ叩くのです。リズム感がいい人たちばかりなので、好き放題でもテンポは合っているし勢いがあります。
Nさんも、大太鼓から締太鼓や鉦などいろいろな鳴り物を持ち替えながらノリノリになりました。
なんかちょっと祝祭的な酩酊感みたいなのが湧いてきましたよ。


ジャムセッションですね! ジャズですね!」
と感想を述べて、Nさんは入会を決めました。
(じつに)


※コメントでご指摘をいただき、またほかの人にも確認しましたが、上記の「なんと南越谷阿波踊りに出演している連のお囃子はすべて同じで、流している間中ずっと変わらないものなのだそうです!」という部分は僕の誤解でした。南越谷阿波踊りでの統一の鳴り物は基本的にフィナーレ用で、通常の流し踊りでの鳴り物は連ごとの独創に任されています。(2007年6月18日追記)