徳島の夏のぞめきが充満していた

松原シネマで映画『眉山』を観ました。
ロビーでぼーっと待ってたら、どこからともなく阿波踊りのお囃子が聞こえてきて「え? なぜ? どこから?」と浮き足だってしまいました。なんだ場内から漏れた映画のクライマックスの音でした。そうか、これから阿波踊りの映画を観るんだ、と胸が高鳴りました。


映画の徳島は美しい街でした。そして夏のぞめきが充満していました。
夜の川沿いの公園を咲子(松嶋菜々子)と寺澤(大沢たかお)。二人が歩くのをカメラが横から追うと、背後の公園で阿波踊りの練習をしている人たちの様子が延々と見えるんです。笛の練習でドレミファソラシドって吹いている子とそれを見守って教えている人や、グループで女踊りをしている人たちや、一人で団扇を構えて静かに踊る人……。この感じが徳島ならではの街のぞめきなのか、と思いました。そして咲子が立ち止まり、肩を震わせるのです。


咲子は、よく泣いていました。
お母さんが末期ガンに侵されているという重い事実に直面してから、咲子は胸がつまったまま、表情も強張ったままでした。映画の情感は絶望の手前の張りつめたムードに支配されていました。阿波踊りはもういいや、咲子を見守ろう、と僕は物語にのめりこんでしまいました。


でもラストの「総踊り」はさすがに圧倒されました! その総踊りのど真ん中に立ちつくして(踊る人の迷惑!)、咲子は涙を流したのです!


みなさんぜひ観に行きましょう!
(じつに)