テクよりも魂

音楽専門月刊誌『ミュージック・マガジン』の2月号に載っていたギターウルフのインタビューを読んで、びっくりしました。
ギターウルフっていうのは、黒い革ジャンに黒いレザーパンツにサングラスの3人組ロックバンドです。日本人です。
http://www.guitarwolf.net/main.html
でかくて割れまくった音が特徴で、CDでもノイズの渦でだんごになった轟音に圧倒されます。アメリカでも人気があるそうです。一昨年、ベーシストが亡くなって、バンドの存続が危ぶまれましたが、新メンバーを入れて、久しぶりの新譜が発売になるという情報が載っていました。
さて、読んでびっくりした内容っていうのは、新メンバーのことなんです。
新しいベーシストを決めるために、オーディションをやったというのです。すごいバンドですから、テクに自信のあるベーシストが100人も来ました。でも、全員不合格にしたのでした。で、応募してきたわけでもない「19歳のガキ」をメンバーに決めたのです。そのガキはベースなんかさわったこともないし、ギターウルフのライブも2回しか見たことがないというのです! 音楽的な素養ではなく、存在感で、つまりかっこよさで選んだのでした。
写真を見るとすげえワルそうな面構え!
その「19歳のガキ」を3か月教育した。
といっても、たまたま「19歳のガキ」の兄がベーシストだったので、ベースの技術は兄に任せ、リーダーのセイジがやったことは「山口富士夫のライブに連れて行ったり、『狂い咲きサンダーロード』のDVDを見せたり」することだった。
かっこよさとは何かを教えることだった。
精神(スピリット)を注入することだった。
そして新メンバーUGが初のライブに立った。

「最初のライブの時にUGが”座らないと弾けない”って言うから、いいから立ってやれ、と。1個1個丁寧に弾くんじゃなくて、無理矢理ケモノになっていくというか。それが一番、使う方法。それがギターウルフの色になっていると思う」(セイジ)

「どうせ、ちゃんと弾けないし、じゃあやりたいようにやればいいかな、と。そしたらステージに立った瞬間から、客もスゲエいて、ちょっと高いから見下ろす感じで(笑)。スッゲエ楽しくなって。こんな楽しいこと、なんでやってなかったんだろうって。毎日やりたいと思った」(UG)

ステージに立つ者が見せるべきなのは技術ではなくまず存在感なのでしょう。魂(ソウル)なのでしょう。
(じつに)