「ぞめき」とは何か

阿波踊りに関わり始めてから出合った言葉に、「ぞめき」があります。
阿波踊りのメンタリティを示す重要な単語のようですが、よくわかりません。調べてみました。

まず以前にも取り上げたことのある四国学院大学講師、三好昭一郎先生の「阿波踊りの歴史」に、「ぞめき」に触れた部分がありました。
http://www.awabank.co.jp/kojin/odori_1.php

「ぞめき」とは騒がしいなどの意味で、派手で賑やかな踊りにつけられた名称である。具体的には二拍子の軽快で陽気さを特徴とする踊りで、今日の阿波踊りというのは、基本的にこの踊りを継承するものである。

つまり、踊りの種類だというのです。
江戸時代に徳島の城下で「ぞめき踊り」が行われていたという歴史的事実があったという文脈です。

でも、「ぞめき」は阿波踊りの急調子の三味線の音だ、という説明や、二拍子のお囃子そのものが「ぞめき」だ、という説明も、多く目にしました。
歴史的には踊りのことだったのかもしれませんが、そこから三味線へ、そして鳴り物全体も示すようになったのでしょうか。


あとよく見かけるのが、「ぞめきは騒ぐことという意味」という説明。
もしやと広辞苑を引いたらちゃんとありました! 漢字で「騒き」。ワープロでも変換できるんです!

ぞめき(騒き)
1. さわぐこと。さわぎ。
2. うかれさわぐこと。特に、遊び人などが、遊郭をひやかしさわぎ歩くこと。また、その客。

「夏になると浮かれ騒いで踊る連中が現れる。困ったもんだ」と眉をひそめて、あいつらは「ぞめき」だと良識ある人たちが非難し、「そうとも俺らは『ぞめき』だ、悪いか!」と踊る者たちは自ら名乗るようになった。そんなことが江戸時代の徳島であったのでしょうか。
蔑称が転じて、誇りを持った自称となる例って多いと思います。
「歌舞伎」がそうですよね。「パンク」とか「グランジ」とかもそう。「ジャズ」もそういう説があるようです。


さらに「ぞめき」は阿波踊りの独特の気分を示す言葉だ、という説明も多く見かけました。
「からだとことばの教室」というサイトで、会田浩子さんという方が書いたコラムの一部を紹介します。
http://www.geocities.jp/jurajimusho/co_535.html

夏が近づき御囃子が聞こえ出すと、もうからだがうずうずし出して居ても立ってもいられない。そんな状態を地元では「ぞめく」というらしい。
 伝統的な踊りは、三味線や笛のゆっくりしたテンポで始まり、溢れ出ようとする熱を内側にぐっと溜め続ける。鉦と太鼓が加わり、沸点を越えたエネルギーが弾け飛ぶ。型でエネルギーを溜め、踊り続ける。踊り続けて、踊らにゃわからぬもう一つの「ぞめく」がやってくるという。
 踊る自分の肉体を越え、何かわからぬものに触れる。囃し手踊り手見る者が一つに融け合い、ある高みへと昇る。その高ぶりがもう一つの「ぞめく」だろうか。

高円寺や南越谷で何度も見てきた阿波踊りを思い出し、そしてこの夏初めてやる側として参加する阿波踊りを想像して、胸がぞわぞわと騒ぎました。そして熱くときめきました。
(じつに)


※上記の会田浩子さんは、ある徳島を舞台にした小説を読んで思いをめぐらして、このコラムを書いたらしいのですが、その小説って何でしょう? さだまさしの『眉山』?