勝負は舞台

長女が高校で演劇をやっています。
先日公演があったので、見てきました。
実は事前に脚本を見る機会がありました。演劇部員が自分たちで書いた脚本です。
読んだ印象は、場面と場面がつながっていないし、起承転結もクライマックスもないし、あまり出来はよくないかな、という感じでした。
これを舞台で見るとなると退屈で居心地が悪い思いをするのではないかとおそれ、それなりの覚悟をして臨みました。
でも予想は裏切られました。


シナリオでは読み取れなかった、セリフにない意味が立ち上がってきたのです。
タイトルが「ある夏の日のおくりもの」というのですが、主人公が各場面ごとに出会い交流する相手からなんらかの形のない贈り物を受け取り、また渡していたんだな、ということがわかったのです。


最後の場面は主人公の部屋で、最初の場面と同じシチュエーション。主人公(男の子)と双子の妹の会話です。
違うのは、最後の場面では双子の妹はすでに死んでいることです(幽霊として登場していた)。
人はささやかな贈り物をもらい、そして与えることで、それぞれの心の中でささやかな変化(成長)を生み出す。
主人公は第一幕と最終幕で全く同じ構図で同じようなセリフをしゃべっているけれど、死んでしまった妹から受け取った贈り物によって確実に何かが変わっているのです。ひとりでも生きて行けるようになったのです。


シナリオでセリフだけ読んでいただけでは、そこまで読み取れませんでした。舞台で生身の人間が精一杯言葉を発する姿を目の当たりにして、初めてしっかりと伝わりました。
シナリオは設計図に過ぎず、舞台が完成品なのですね。勝負は舞台。
(じつに)